マンションのリフォームにおいて、キッチンの場所を移動させる工事は非常に難易度が高く、事前の技術的なチェックが成否を分ける事例研究と言えます。ある築30年のマンションで行われた事例では、壁際にあったキッチンを部屋の中央に移動させ、アイランドキッチンにしたいという要望がありました。ここで最大の障壁となったのは、やはり排水管の通り道です。マンションの排水は、住戸内を貫通している「竪樋」と呼ばれるメインの配管に接続しなければなりませんが、キッチンの位置が竪樋から遠くなればなるほど、排水を流すための傾斜が必要になります。この事例では、床下の懐がわずか10センチしかなく、通常の方法では配管を隠すことができませんでした。解決策として、排水を強制的に吸い上げるポンプを導入する案も検討されましたが、音やメンテナンス性を考慮し、最終的にはキッチンの床面のみを10センチ底上げし、その隙間に配管を通す「二重床」の手法を採用しました。また、換気扇のダクト(排気経路)についても注意が必要です。レンジフードの位置を移動させると、排気ダクトが長く伸びることになり、曲がり角が増えるほど排気効率が低下し、吸い込みが悪くなったり騒音が大きくなったりする原因になります。この物件では、梁を避けてダクトを通すために天井の一部を下げる必要があり、デザイン的な統一感を持たせるために、下げ天井の部分に間接照明を仕込んで意図的な演出として昇華させました。さらに、電気容量の確認も不可欠です。ガスからIHクッキングヒーターに変更する場合、マンション全体の電気容量に余裕がないと、同時に他の家電が使えなくなるトラブルが発生します。管理組合への確認を怠ったことで、工事直前に計画変更を余儀なくされるケースも少なくありません。キッチンの移動は、単に見た目を変えるだけでなく、建物の構造と設備インフラを深く理解した上で行うべき高度な改修であることを忘れてはなりません。
マンションのキッチン移動リフォームの注意点