リフォームの中でも最も生活に直結し、かつ技術的な難易度が高いのが水回りの改修です。キッチン、浴室、洗面所、トイレといった水回り設備を、最新のモデルに交換するだけでなく、その位置を大胆に移動させたいと考える人は多いでしょう。しかし、水回りリフォームでどこまでできるかを決定づけるのは、目に見える設備のデザインではなく、目に見えない配管のルートと勾配です。特に排水については、重力を利用して水を流すため、排水管には一定の傾斜が必要です。もしキッチンをリビングの中央に移動させた場合、床下を這う排水管を排水本管まで繋ぐまでの距離が長くなります。この距離が長くなればなるほど、必要な高低差も増えるため、スラブと床板の間の空間が不足していれば、床全体を高くするか、あるいは移動を断念しなければなりません。マンションの場合は特にこの制約が厳しく、共用部である縦配管の位置を動かすことは絶対にできないため、そこを起点とした同心円状の範囲が移動の限界となります。トイレの移動についてはさらに慎重さが求められます。汚水管は雑排水管よりも太く、つまりを防ぐためにさらに急な勾配が必要とされるからです。一方で、給水や給湯の管についてはポンプの圧力で送るため、比較的自由に取り回しが可能であり、場所を選ばず新しい蛇口を設置することは技術的にそれほど困難ではありません。最近では、壁を抜かずに配管を通せるリフォーム専用のコンパクトなシステムバスや、壁排水タイプのトイレなども登場しており、以前に比べれば移動の自由度は高まっています。また、ガスコンロからIHクッキングヒーターに変更する場合は、ガス管の閉栓作業と併せて200Vの専用電源を引く電気工事が可能かどうかが分かれ目となります。水回りリフォームを成功させるためには、デザインに目を奪われる前に、まず床下の構造を確認し、技術的にどこまでできるかを冷静に見極めることが重要です。見えない部分のインフラをしっかりと整えることで、10年、20年経っても水漏れや詰まりのない、快適な水回り環境を維持することができるようになります。